今回、MicrosoftがMicrosoft 365 E5相当の機能をMicrosoft 365 Business Premiumで利用できるアドオンをリリースしたため、具体的な機能や価格について紹介していきます。
クラウド利用が当たり前となり、個人情報保護法やGDPRなどの法令遵守が重要になる中、中小企業でも「セキュリティを強化したい」というニーズが急増しています。
これまで、Microsoft 365 Business Premiumで不足する機能を補うには「Microsoft 365 E5プラン」か「個別アドオン」を選ぶ必要がありました。しかし、複数アドオンの契約や設定は管理が複雑で、導入のハードルが高いという課題がありました。
今回登場したMicrosoft Defender Suite for Business Premium と Microsoft Purview Suite for Business Premiumを利用すれば、Microsoft 365 E5に近いセキュリティとコンプライアンス機能を、よりシンプルかつ低コストで実現できます。
目次
- 1．Microsoft Defender Suite for Business Premiumとは？
- 2．Microsoft Purview Suite for Business Premiumとは？
- 3．これまでのMicrosoft 365 Business Premiumの課題
- ーMicrosoft 365 Business Premiumのみでできること
- ーMicrosoft 365 Business Premiumのみでできないこと
- 4．実際にどんな機能が使えるようになるの？
- 5．それぞれの料金を徹底比較！
- 6．実際、お得なの？
- 7．活用シナリオ
- 8．まとめ
1．Microsoft Defender Suite for Business Premiumとは？
Microsoft 365 Business Premiumにセキュリティを強化するオプションです。標準のMicrosoft 365 Business Premiumではカバーしきれない「ID保護」「高度な脅威対策」「クラウドアプリの制御」など、Microsoft 365 E5クラスの機能を追加できます。
2．Microsoft Purview Suite for Business Premiumとは？
情報保護・コンプライアンスを強化するオプションです。標準では基本的なDLPや暗号化のみですが、このアドオンを追加すると、内部リスク管理やeDiscovery、AI情報保護・コンプライアンスを強化するオプションです。標準では基本的なDLPや暗号化のみですが、このスイートを追加すると、内部リスク管理やeDiscovery、AI利用時のデータセキュリティまで対応できます。
3．これまでのMicrosoft 365 Business Premiumの課題
Microsoft 365 Business Premiumは中小企業向けに最適化されたプランで、Officeアプリ、Teams、クラウドストレージ、基本的なセキュリティが揃っています。
しかし、最近の脅威や法令対応を考えると、次のような課題があります。
ーMicrosoft 365 Business Premiumのみでできること
| ・Officeアプリ（Word、Excel、PowerPointなど） |
| ・Exchange Online、SharePoint Online、OneDrive for Business |
| ・Teamsによるコミュニケーション |
| ・基本的なデバイス管理（Intune） |
| ・Defender for Businessによるエンドポイント保護（基本機能） |
ーMicrosoft 365 Business Premiumのみでできないこと
| ・ID保護の強化（怪しいログインを自動ブロック、条件付きアクセスの高度化） |
| ・高度な脅威防御（端末攻撃の自動修復、ゼロデイ攻撃対策） |
| ・クラウドアプリの可視化と制御（Shadow IT対策） |
| ・高度な情報保護・コンプライアンス（内部リスク検知、eDiscovery、AIデータ保護） |
4．実際にどんな機能が使えるようになるの？
Microsoft 365 E5に近いセキュリティ＋コンプライアンス機能を、Microsoft 365 Business Premiumベースで使用可能になります。
| ■Microsoft Defender Suite for Business Premiumを入れると… |
|---|
| ・ID保護が強化されるようになる |
| ・エンドポイント防御がMicrosoft 365 E5レベルになる |
| ・メール攻撃対策が強化されるようになる |
| ・クラウドアプリの可視化ができるようになる |
| ■Microsoft Purview Suite for Business Premiumを入れると… |
|---|
| ・情報漏えい対策が本格的になる |
| ・内部リスク管理ができるようになる |
| ・法的対応や監査がラクになる |
| ・AI関連のデータ保護ができるようになる |
具体的な使用可能製品をまとめましたのでご参考ください。
| Microsoft 365 Business Premium | Microsoft Defender Suite for Business Premium | Microsoft Purview Suite for Business Premium | Microsoft Defender and Purview Suites for Business Premium | ||
| Microsoft Entra ID P2 | P1のみ | 〇 | — | 〇 | 条件付きアクセスやリスクベース認証でID保護を強化 |
| Microsoft Defender for Identity | — | 〇 | — | 〇 | AD環境の不審な動きを検知し、ID攻撃を防御 |
| Microsoft Defender for Endpoint Plan 2 | Defender for Business | 〇 | — | 〇 | 端末の高度な脅威検知・自動修復・脅威ハンティング |
| Microsoft Defender for Office 365 Plan 2 | P1のみ | 〇 | — | 〇 | ゼロデイ攻撃や危険リンク、添付ファイルの動的解析でメール保護 |
| Microsoft Defender for Cloud Apps | — | 〇 | — | 〇 | Shadow ITを可視化し、クラウドアプリの利用を制御 |
| Microsoft Purview Insider Risk Management | — | — | 〇 | 〇 | 退職前のデータ持ち出しなど内部リスクを検知 |
| Microsoft Purview Information Protection | 基本的なコンプライアンス機能と 情報保護機能のみ | — | 〇 | 〇 | 機密ラベルでデータ分類・暗号化を実施 |
| Microsoft Purview Data Loss Prevention | 基本的なコンプライアンス機能と 情報保護機能のみ | — | 〇 | 〇 | Teamsや端末まで含めたDLPで情報漏えい防止 |
| Microsoft Purview Message Encryption | — | — | 〇 | 〇 | メールを暗号化し安全に送信 |
| Microsoft Purview Customer Key | — | — | 〇 | 〇 | 独自キーで暗号化を管理し、データ保護を強化 |
| Microsoft Purview Communication Compliance | — | — | 〇 | 〇 | Teamsやメールの不適切なやり取りを監視 |
| Microsoft Purview Data Security Posture Management (DSPM) for AI | — | — | 〇 | 〇 | AIが扱うデータのリスクを可視化・管理 |
| Microsoft Purview Records & Data Lifecycle Management | — | — | 〇 | 〇 | データの保持・廃棄ポリシーを自動化 |
| Microsoft Purview eDiscovery (Premium) | — | — | 〇 | 〇 | 訴訟や調査対応のための高度なデータ検索・保持 |
| Microsoft Purview Audit (Premium) | — | — | 〇 | 〇 | 詳細な監査ログで不正や問題を追跡 |
| Microsoft Purview Compliance Manager | — | — | 〇 | 〇 | コンプライアンス状況を評価・改善 |
5．それぞれの料金を徹底比較！
下記価格表はアドオンの価格のみ載せています。
Business Premium 39,576円/年が基本料金になり、各追加ライセンスとして下記価格が基本料金に追加になります。
※ Microsoft Purview 関連の各機能は、スタンドアロン製品としては提供されていません。
6．実際、お得なの？
現在、Microsoft 365 Business Premiumを使用しているユーザーが上記機能を利用するには、次の3つの選択肢があります。
１． Microsoft 365 E5プランを契約する
２．必要な機能を個別アドオンで追加する
３．Microsoft 365 Business PremiumにSuiteを追加する（※今回のアドオン）
Suiteの各プランは本当にお得なのか？実際に年間コストを比較してみます！
Microsoft Defender Suite for Business Premium
■個別アドオン vs Suite利用の差額を比較
| プラン | 年間費用（円） | 内訳 |
|---|---|---|
| Microsoft 365 Business Premium + Microsoft Defender Suite for Business Premium | 57,564 | Microsoft 365 Business Premium: 39,576円 + Microsoft Defender Suite for Business Premium: 17,988円 |
| 個別アドオン | 90,276 | Microsoft 365 Business Premium + 各Defender機能 |
| 差額 | 32,712 お得 | 約36%削減 |
Microsoft Purview Suite for Business Premium
■ Microsoft 365 E5利用時 vs Suite利用時の差額を比較
| プラン | 年間費用（円） | 内訳 |
|---|---|---|
| Microsoft 365 Business Premium + Microsoft Purview Suite for Business Premium | 57,564 | Microsoft 365 Business Premium: 39,576円 + Microsoft Purview Suite for Business Premium: 17,998円 |
| Microsoft 365 E5 | 98,496 | － |
| 差額 | 40,932 お得 | 約42%削減 |
※ Microsoft Purview 関連の各機能については 単体購入ができないためMicrosoft 365 E5利用時と比較しています。
Microsoft Defender and Purview Suites for Business Premium
■ Microsoft 365 E5利用時 vs Suite利用時の差額を比較
| プラン | 年間費用（円） | 内訳 |
|---|---|---|
| Microsoft 365 Business Premium + Microsoft Defender and Purview Suites for Business Premium | 66,552 | Microsoft 365 Business Premium: 39,576円 + Microsoft Defender and Purview Suites for Business Premium: 26,976円 |
| Microsoft 365 E5 | 98,496 | － |
| 差額 | 31,944 お得 | 約32%削減 |
※ Microsoft Purview 関連の各機能については 単体購入ができないためMicrosoft 365 E5利用時と比較しています。
7．活用シナリオ
ケース１
| 問題 | リスク | 対応ライセンス | 解決策 |
|---|---|---|---|
| 退職者が大量のファイルをOneDriveからダウンロードしていたが、気づいた時には外部に持ち出されていた | 機密情報の外部流出 | Microsoft Purview Suite for Business Premiumの Insider Risk Management | 退職者による異常なファイルダウンロードを自動検知し、外部持ち出し前にアラートで対応可能 |
ケース２
| 問題 | リスク | 対応ライセンス | 解決策 |
|---|---|---|---|
| 取引先から「セキュリティ体制の証明」を求められたが、監査ログや証跡が不十分 | 信頼性の低下・取引停止の可能性 | Microsoft Purview Suite for Business PremiumのAudit PremiumとCompliance Manager | 詳細な監査ログやコンプライアンス証跡をすぐに提示でき、取引先への信頼性の証明がスムーズに実施可能 |
ケース3
| 問題 | リスク | 対応ライセンス | 解決策 |
|---|---|---|---|
| 社員がTeamsで機密情報を誤って外部ユーザーに送信 | 情報漏えい・信用失墜 | Microsoft Purview Suite for Business PremiumのDLP拡張 | Teamsや端末での機密情報の送信を自動で検知・ブロック、誤送信による情報漏えいを未然に防止 |
ケース4
| 問題 | リスク | 対応ライセンス | 解決策 |
|---|---|---|---|
| 海外から怪しいログインが発生、アカウントが乗っ取られた可能性 | 不正アクセス・業務妨害 | Microsoft Defender Suite for Business PremiumのEntra ID P2 | 不審なログインを検知して、リスクに応じて自動でアクセスをブロック、乗っ取りの前に安全を確保可能 |
ケース5
| 問題 | リスク | 対応ライセンス | 解決策 |
|---|---|---|---|
| AI（Copilot）導入後、どのデータがAIに使われているか不明で、情報漏えいリスクが心配 | 情報漏えい・ ガバナンス不備 | Microsoft Purview Suite for Business PremiumのDSPM for AI | AIがどのデータを扱っているかを可視化し、情報漏えいリスクを把握・管理可能 |
8．まとめ
今回、Microsoft 365 Business Premium向けのアドオンが追加されたことで、これまで「Microsoft 365 E5の購入」or「アドオンの個別追加」しかなかった選択肢に、新しい選択肢が増えました。
また、上記で紹介した通り、かなりお得な料金設定となっているため、現実的な選択肢になるかと思います。
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